Go Go Fishing!

2004・9・13 浦安吉久・イイダコの巻

通勤ラッシュを片目に
今回出船する船宿は、旧江戸川と東京メトロ東西線が交差するたもと、浦安の『吉久(よしきゅう)』だ。
東京湾で釣ることのできる魚ならたいていのものを看板にしていて、季節ごとに変わる、メバル、アナゴ、シロギス、スルメイカ、カサゴ、タチウオ、マダコ、スミイカ、カレイなどをはじめ、観音崎沖で狙うアジは1年中釣ることができる。

都心から一番近い船宿としては、ここと隣の『吉野屋』が最大手といえ、平日だってのに船宿の周りは釣りオヤジらでごった返し、朝から大盛況だ。

満員の通勤客を乗せた電車が青い鉄橋を駆け抜ける中、おれたちは船に乗って釣りの支度をする。
これが週末ともなると船の方が大混雑でとてものんびりとなんかしてらんないけれど、今日は月曜。
人が働いてるときに遊ぶことほど気分のいいものはない。
「これから無事出船しまーす。例によって釣果は期待しないでねー」と家で待ってるかみさんにメールを送った。
「はーい、気をつけてねー。おかず買わないからね〜」という返事を読みながら、おれは大きくタバコの煙を吐いたのだった。


エサはラッキョウ!!
さて。
今日の獲物はイイダコ。
左の写真を見ていただきたい。これは『テンヤ』という仕掛けで、つまようじに刺さっているエサはなんとラッキョウなんですな〜。
冗談みたいな話なんだけど、こいつを海底に落とすとイイダコってやつはこの白いラッキョウにニョロニョロ〜って乗っかってくるんだって!
マジっすか!?
あはは、マジなんですわ、これが。
「なんかハズレなしに釣れるもんないかな〜」ってネットで探してたら、このイイダコがすごかった。
富津の川崎丸で連日100杯以上の釣果が出ていて、『爆釣街道まっしぐら海越え山越え川越えて釣れます釣りますどこまでも。さあ曲目は「三国名産・恋の花らっきょう」です。はりきってどうぞー!』



江戸前の自然
地上はまるでタイと同じような酷暑が続いていたが、船が陸を離れると海上の風はとても涼しく、約50分のクルージングは最高に気持ちがよかった。
やがてエンジンがスローダウンしたのは、東京湾アクアライン近く。
ここは小櫃川の河口、通称『盤洲(ばんず)干潟』と呼ばれる所のさらに沖あいにあたり、水深は約3mほどだ。
アクアラインの橋を右手にすると、正面、船の先っちょには何百本もの竹の棒が立てられているのが見えた。
これはアサクサノリの原料である海苔の網が張られているんだとか。

『消え行く江戸前の自然』という言葉が頭をよぎる。
台場周辺は言うに及ばず、東京湾岸線はものすごいスピードで人間が動き、日々「建てて壊して」を繰り返しているというのに、この海域だけは大昔からこのまんまだという。
変わらない海の下の、変わらないイイダコの生活。

船べりからのぞく盤州沖の潮はまあまあ透き通っててきれいなように思えた。


東京湾では年寄りほど腕がいい
「はい、どーぞー。あんまりね、激しく小突いちゃうと底から離れちゃうからね、トントン優しくやってね。乗ったと思ったらギュッとしっかり合わせないと抜けちゃうからねー」
…と、多分そう言ったんだと思う。
というのも、イイダコ担当の今日の船長はどう見ても年金もらってるかんじのじさまで、マイクでしゃべってもモゴモゴといまいち聞き取れないのだ。
そういえば、同船している他のお客もみーんなじさまばっか。まるで老人会の寄合だもんね。

さあ、したら、御仁たちの勘と経験を見せてもらおうじゃないの。
時にじさまらは、思いもよらぬパワーを見せ付ける。
こっちにぜんぜんアタリがないときも、涼しい顔でバカスカ釣り上げることがほんとによくある。おれは今までいやというほどそんな光景を目にしてきたのだ。

『東京湾の小物釣りほど経験の差が出るものはない』
これだけはもう、マジ、間違いない。

結果から言っちゃうけど、朝っぱらから焼酎とビールをちゃんぽんであおっていたアル中じさま(写真右)が、実はとてつもない凄腕の持ち主で、ノンストップの入れ乗りでかるーく160杯以上釣り上げていたのであった…。



イイダコ釣り虎の巻
つーか、他人のことなんか一切気にしないで釣りに集中したいもんだわ、マジで。
さ、釣り釣り。

マダコ釣りの要領で、テンヤを底から離さずトントン小突く。赤いオモリだけが上下するイメージでトントン、トントン。
踊るラッキョウに魅せられて、イイダコが寄って来てテンヤに抱き付く。
するとオモリが底に当たる堅い感触が、急にモタッと重くなる。
このときにすかさず「エイヤッ!」と大きく合わせをいれてやると針に引っかかるというわけで。
うまく乗ればそのまま巻き上げて、無事ゲッツとなる。
こんな小さなイイダコも、テンヤに乗れば水の抵抗でなかなかの重量感があるから釣り味もまあまあ。
海中から上げられると、イカ並みにピュ−ッと水や墨を吐くのもまたかわいらしいのだった。

また、釣り上げたイイダコは網やビクに入れておかないといけない(写真下)。
隣のおっさんのようにバケツに入れるだけだとあっという間に脱走してしまい、さっさと海に帰ってしまうのだ。

そういや何度かおれの方にニョロニョロ歩いてきたやつがいてビクに戻したが、はて、あれは一体どこから来たのだろう…。
ナゾだなあ〜。


釣りはアブナイ薬です
「トントントン、ビシッ」
と、なんと第1投目から釣れてしまった。
おれは何をやらせても器用にこなす。
イイダコ初チャレだというのにいきなりコツを飲み込んでしまった。
おれはほんとに釣りの天才なのだ。わはは。

と書きたかったが、実は1投目はバラシてしまった。
合わせが弱いために、スルリと針の間から逃げられてしまったのだ。
「ほらー、合わせはもっと強くやんないとー!」
隣のグラサンじじいにアドバイスを受けて2投目にゲッツしたが、イイダコのアタリはほんとに分からない。
『テンヤが重くなる』ということが極めてビミョーで、実際さっぱりつかめないのだ。
「なんか重いかもー」って合わせてもゴミや海草だったりする。
かと思えば、ちゃんと乗ってて合わせ損ねて海にポチャン。

しかしそれでも適当にやってて、ポツポツと釣れ上がるから面白いのだ。
おやつにかじってたチクワの白いとこをラッキョウの代わりに付けてみたら、あらま、これでも釣れちゃうんだもんね。
超楽しー!!

たかがイイダコと笑ってるあなた、1度やるとマジでハマっちゃいますよ〜。
釣りは麻薬ですよ〜。


ディズニーランドから1時間
『昨日も一人あたり100杯前後の釣果があって、1日2000杯以上釣り上げているのに、今日もそれ以上釣れました。これがほとんど毎日ですからね、海の中には数え切れないほどのイイダコがうじゃうじゃいるんでしょう』
ある船宿の船長のコメント通り、こんなおれでもあまり途切れることなく釣ることができた。
だって、落とせばアタリっぽいのがくるんだもん。
ハズレも多いけど、中にはしっかり重く乗るやつもいてそういうのを確実に取るのが数を伸ばすコツなのだ。
定刻の14:30まで、なんとか75杯釣った。
100には届かなかったけど、周りを見るとまあまあの釣果だった。

そういや、ダントツのアル中ジジイはなぜあんなに釣れるのか最後まで分からず終いだった。よく観察したのになあ。
手の震えが意外に効いちゃったんでしょう。

ディズニーシーの火山を右手に、酒臭いじさまらを乗せて船は江戸川へと入って行った。
おれは、イイダコの釣れる海の方が、やっぱ、好きだなあ。