2004・12・16 外房大原・鈴栄丸 ショウサイフグ・その2


フグフグフグー!!借りを返しにきたぞー!!
前回、あんまり悔しかったからまた来ちゃった。
同じ大原の同じ船宿、冬季はショウサイフグ専門の鈴栄丸。

『さ、今回こそは満足するよう釣りまくるぞ〜!』
と意気込んでみたものの、冬の外房は甘くはなかった。
出船するなりものすごい高低差のうねりがズドーンとやってきて、先っちょにいたおれの内臓をいやらしく揺さぶる。

こんなときは船の真ん中(胴の間という)に非難して、ひたすら自分に暗示をかけるしかない。
う〜、気合だ気合。おれは酔わんぞー。
『根性』とか『頑張る』とかいった言葉が心底嫌いなのに、いざこういうときになると繰り返しつぶやくからアホみたいだ。

船は手をグーにして固まっている天パー男を乗せて、真っ暗な太平洋を突き進んでいくのだった。


『おかわりありますからねー!』
それにしても寒い。
もう12月だもんね、さみーのは当たり前なんだけど、船の上は風がモロに当たるからしょうがない。
なので、防寒対策は必要以上にやってきた。
フリースの上下にレインウェア、毛糸の帽子を目深にかぶって靴下もフリース素材。首にはネックウォーマーまで巻いてきた。
それでも冷気が全身に沁みてくるから、冬の釣りはほんと侮れない。

そうこうしているうちに船はポイントに到着した。
辺りはまだ真っ暗で、空には星も見える。
アナゴの夜釣りさながら照明を灯して、いざ投入開始。
さすがにこんな朝っぱらからじゃフグも食欲がわかないらしく、なかなか釣れてはこなかった。…というのはおれの話で、隣の青いカッパのおじさんは1匹2匹とスローペースではあったけど、静かに本命を釣り上げていた。

……。

だいぶ明るくなってきたころ、船長がお客みんなに熱い味噌汁を配りはじめた。シャケのぶつ切りと野菜たっぷりの味噌汁は、すするたんびに体の芯から温まる。これはほんとにすばらしいサービスだと思う。

かみさんに持たしてもらったおにぎりをガッツキながら、揺れる船の上でお椀片手にプハーッと息を吐く。
置き竿にしてあった竿がアタリを告げたような気もしたが、メガネが湯気で曇っていまいち見えない。
あはは、知らんわい。
今は味噌汁の方が大事なのさ。



鈴栄丸特製、シャケの具だくさん味噌汁。感涙モノのうまさ。

勝手に写真撮ってすいませんでした。
ふくのかみがあらわれた
味噌汁、あーうまかった。船長ごちそうさまでしたー!
…とおれはただズルズルすすっていたわけではなかった。この青カッパのおじさんの釣り方にずっと見入っていたのだ。

仕掛けは必ず遠投する。
完璧なアンダースローでビューンと軽く30mは投げていた。
仕掛けを沈めたら、まるでルアーのようにトゥウィッチング。
2、3回しゃくって止めてを繰り返したら、ビシッと合わせてヒット。
ウィーンと小型電動リールで快速巻上げ。
獲物を抜き上げたらパパッと外して、再び遠投。

流れるように美しい一連の動きは、まさに神技と呼ぶにふさわしかった。
右隣で竿を出す船長をはじめ、誰もこの人の腕には敵わなかった。

また、この青カッパ氏のエサにも注目しなくてはならない。
船に乗る際、女将から配られるのが冷凍のアオヤギ。
普通はこのまま解凍してハリに付けるのだが、青カッパ氏は全てナイロンの袋に移し変えて、大量の粗塩をまぶし袋ごとグニグニもむのであった。
冷凍⇔解凍を繰り返したアオヤギの水気を抜いて、エサ持ちを良くしようということだろう。

関西ではフグのことを『ふく(福)』というらしい。
フグ釣り界の福の神現る。
おもしろくもないシャレとはいえ、おれには青カッパの背中にまばゆい後光が差すのを見た、そんな気がしてならなかった。


知らぬは一生の恥
「うまい人はエサから違うんだよな〜」なんてボケーッと見とれてるばやいじゃなかった。
こっちも釣らんとー!

実は最初、おれは前回の「オモリを浮かす」釣り方で攻めていた。
しかしこのやり方は、なにが悪いのかちーっとも釣れることはなかった。
やたらと首をかしげるおれの隣で、福の神はテンポ良く釣果を伸ばしていたのであった。
隣でこんな神技見せ付けられちゃあ、相当引いちゃうんだけど、釣れないことの方がよっぽどツライ。完全に一から見直す必要があった。

ああもう、『聞くは一時の恥』なのだ。

おれはいてもたってもいられず、福の神に問いただした。
「あのーすいません。オモリって、やっぱベタ底なんですか?」
「ああ、そうだよ。オモリは絶対浮かしちゃ釣れないよ」
「あ、ありがとうございましたー」

な、なんとー!!
したら前回の釣り方は思いっきり間違ってたってことなの??????
頭ん中?マークで一杯になりながらも教わった通りにやってみると、お!来ちゃったよ、大本命ショウサイフグ。



ちっさい人間にはフグもちっさいってか。

デコっぱちの30cm。こんなのばかりだといいんだけど。
ノリツッコミも冴えなさすぎた
とりあえず上手な人のマネッコで、遠投もしてみた。
しかしこれは…、以前ジギングのタチウオやったときだ、買ったばっかしの竿リール全て海にブン投げてしまったというアホなトラウマから、いまいち思い切って飛ばせなかった。
しゃあない、船下狙いで地道にやるしかない。

オモリをベタ底で、たまにしゃくってのタイム釣り。
福の神が3匹上げたら、やっと1匹釣れるといったテンポの悪さだけど、地味ぃーに釣ることができた。
なんとか数は伸ばすことができても、サイズが前回と同じチビばかりだった。
福の神ほか左隣の人も船長も、プックリ太ったデカフグばかりなのだ。
型の小ささにガックシ肩を落としているしているおれに、福の神が声をかけてくれた。
「う〜ん、サイズがまとまんないね〜」
「そーなんですよ、なんでですかね〜」
「あれだよなー!選んで釣ってるんだよなー!」
ガハハと笑う船長が、向こうから変なフォローを入れる。

「はいー!これもなかなか難しいんっすよー」
悲しい言い訳だった。。。


尊敬する人が初めて見つかった
朝方あった強いうねりも、昼近くになるとだいぶ治まってきた。
船の上下揺れが弱くなった分釣りやすくはなった。
しかし、福の神との差は縮まるばかりか、ときおり混じる40cm強のホウボウも4匹難なく取り込んで、氏のバケツは獲物が溢れかけていた。

福の神のスゴイとこをもう一つ。
並んで釣っていると、潮の流れで他の人と仕掛けが絡むことが何度かあるものだ。これは船釣りのお決まりみたいなもんで、お互いにラインを出し入れして外していかなければならない。
グチャグチャに絡まった仕掛けを揺れる船の上で解くのは、決して楽な作業ではないし、大きな時間のロスにもなる。
こんなとき福の神は実にテキパキと絡みを解き、「はい、取れましたよー」と明るく言っていた。また他人の仕掛けはダメージがないように、自分の仕掛けを切るというやり方。
本当にやることなすこと気持ちがいいのだ。

むっさいおっさんばっかの沖釣りで、これほど他人を尊敬したことはない。
おれは初めてこんな人になりたい、と強く思った。

さて、結果。
船中23〜48匹、この23匹というのがおれー。
「スソ」ってやつですな。
でもおれだけサイズが異常に小さかっただけで、みんな似たり寄ったりだった、ハズ、なんですが…。あの福の神の爆釣を除いては。
「○○さーん、数はどれくらいかねー」と船長に聞かれた福の神、
「うん、30くらいかなー」
「そんなことはないべー。もっといってるでしょー」
「いえいえ…」

いや、福の神は軽く60匹は超えていたはずだ。
おれなら鬼の首とったように大自慢で叫ぶのに、なんなのこの謙虚さは。

次、福の神に出会ったら是非弟子入りを懇願してみようと思う。
ちっさい人間ですが、よろしくお願いします。



これでも自己最高の23匹。食べるには十分。